第53話

「はぁ!?!?!?何こいつムカつく!!!」




妖艶な笑みを湛えて地団駄を踏んでいる可愛い従弟。




「お、パンツ見えそうラッキー。」


「殺されたいの?」


「すみませんでした。」




膝上丈のワンピースに誠実な視線を向けている恋人の胸倉を掴んで引き寄せる。



私以外のパンツに興奮するとか言語同断なんだけど(この人も大分可笑しい)





「本当に何なのこの人達……個性が強くてついて行けないんだけど…。」






剣、道梨、飛鳥へと順に目線を滑らせるりー君の顔には、困惑が滲んでいる。



そりゃあそうだ。



こんなのを一気に見たら混乱するに決まっているよね、私も最初はドン引いたし。





「残念だけど莉苑君、これだけじゃないんだよ。」


「え?」





重い溜め息を吐いて諦めた目をしている鈴に、りー君が驚嘆の声を上げた。





「それってどういう意……「真白ぉぉぉおおおお!!!!夏用の新作ワンピースが完成したから着て頂戴なぁああああ!!!!」」





神妙な面持ちで言葉を発したりー君の声は、勢いよく扉を開いて現れた野太い声に遮断された。



長身で端正な顔。



鼻と唇についているピアスだってとてもよく似合っている。






「見てごらんなさい。今回は襟元にもフリルをあしらったのよ、可愛いでしょう?」




唯一似合っていないのは、この絵に描いたような女口調くらいだと思う。




「ほらね、莉苑君言ったでしょう?因みにもう一人、そこの鬼帝剣君にぞっこんな危ない男の人も違う学校にいるから気を付けるんだよ。」


「………。」




苦笑する鈴に対して、りー君の返事がない。




どうやら宵の登場にもう頭の処理が追い付かなくなったのか、彼は口をあんぐりと開けて唖然していた。

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