第51話

蘭、あんた的にはめちゃくちゃ葛藤してるっぽいけど、残念だけどあんたは道梨にもう完全に恋しちゃってるよ。



その顔は誰がどう見ても恋に落ちとる男のそれだよ。





「か、か、か、か、門倉っっ。」


「か、か、か、か、門倉だけど何か。」




いや緊張してる相手をイジるな。



今にも湯気が出そうなくらいに肌を紅潮させている蘭の正面で、剣の膝の上で胡坐をかいてBL本を開いているこの男は、全くもってアイデンティティの塊だ。




アメリカで出生でもしたんか???自由過ぎんか???



ていうかどうしてこいつ等皆制服を着てるんだ???





「真白、やっと会えた。」




空いていた私の左隣にいつの間にか座っていたらしい飛鳥君が、頬を少し膨らませている。



はい可愛い。狡い。




剣のハムスターとは大違いだな、何で一々私の心をキュンとさせる表情をしてくるんだろう。




……単純に飛鳥の顏がドストライクなんだわ、すぐ答え出ちゃった。






「この前俺達置いて帰ったでしょ。」




それは恐らく、夏休み初日の事だ。



私の肩に顎を乗っけて、唇を尖らせている飛鳥が自然とこちらを上目遣いで見てくる。




何てこった、最高だなこの角度。





「俺、寂しかった。」


「ごめんね。」


「ん、もう勝手に帰るの駄目ね。起きたら真白じゃなくて妖怪ばかりに囲まれて悲しかったから。」





アンニュイな雰囲気を漂わせながら、平然と棘のある言葉を吐くよね貴方。




窮屈だったのか、首元を絞めるネクタイをシュルリと解いて欠伸を零す飛鳥はとてもとてもエロかった。

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