第45話

マフィンを齧って、もぐもぐと口を動かすりー君は目を輝かせて聖架を見ている。




「美味しい。」


「なら良かった、沢山焼いたから好きなだけ食え。」




聖架はもう完全にりー君に魂を取られたらしい。


お菓子を褒められて唇に三日月を浮かべている彼は、照れた様子で耳に連なるピアスを指先でなぞっている。



忘れがちだけど、本来あの男は生徒会会計である。





「聖架、そんなに甘やかさないでよ、莉苑君は見た目に反してとんでもない小悪魔なんだから。」





本当に珍しい事もあるもんだ。



りー君を指差して、露骨に警戒心を見せている夢月が意外で私はまだ一口もマフィンを食べられずにいる。




「何、夢月。僕の事、怖いの?」


「怖くはないよ決してね、ただ障壁だとは思っているよ。」


「ふーん。あんな偏差値低男に真白をまんまと奪われた癖に強がちゃっててウケる。」




ねぇ、ちょっと待っておくれ。もしかしなくても偏差値低男って剣の事?私の恋人の事?的をとても得ているけどグサリと目に見えない太い矢が私にぶっ刺さったよ今。




りー君は、私の一つ下の従弟で隣の県に住んでいる。




昔から何故かりー君は私によく懐いてくれて、子宮から出た瞬間から美形が大好物だった私は下に妹弟もいない事もあってりー君が可愛くて仕方がなかった。

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