第44話

会長様の妖艶な笑みにも屈する事のない勇者鈴は、無言で資料の山を指差した。





「仕事効率が普段より3割くらい落ちてる。これ以上の証拠が必要ですか?裁判長。」





鈴の一言に、私は目ん玉が飛び出しそうになった。実際多分ちょっと飛び出た。




え…あれで仕事効率が落ちてるの?



私が見る限りでは、夢月がこなした仕事は膨大だ。



蘭お前も少しは見習えって胸中でちょいと毒づいてしまったくらいには、彼の仕事を片付ける速さは目を見張る。






「……はぁ、君の勝ちだよ宮園検事。」





深い溜め息を吐いた彼は、降参だと言わんばかりに両手を上げて苦笑を滲ませた。





「もう毎年の事なんだからいい加減莉苑君で機嫌を損ねるのは辞めたら?」


「そうはいかないよ。だって…莉苑君は一々真白との距離が近すぎるんだもの。それを目の前にしてるこっちは気が気じゃないよ。」




頬杖を突いて不貞腐れた顔を見せる彼は、アーモンドアイでりー君を捉えた。




えっ…ちょっ…もしかしなくても、私の事で仕事が手につかなかったの?



嫉妬していたって事???



こんな贅沢な状況が今までにあったかしら、滅多に見られない子供っぽい幼馴染の姿に優越感を覚えてしまう。





どうしよう、私性格悪いからこの状況を全国の女に自慢して歩きたい。

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