第43話
「お菓子焼けたぞ、お茶にしよう。」
装飾の綺麗な皿にマフィンを乗せて、キッチンからやって来た長身の男の影が、私とりー君にかかる。
影を辿って顔を上昇させた先には、手際よく人数分の紅茶を淹れ始めた
彼のお手製で焼き立てらしいマフィンは、湯気を立てていて美味しそうだ。
「今日も素晴らしい出来だね。それにしても………紫陽花会長はいつになったらご機嫌が戻るのかな?」
マフィンを一つ小皿に取り分けて、会長席にそれを静かに置いた鈴は「糖分でも摂取した方が良いよ。」と言って微笑んだ。
紅茶にミルクを投入しながら、鈴に微笑み返してティースプーンを手にした夢月は肩を竦めた。
「何の事?苛立ったりなんてしてないよ。」
いつも通りの穏やかで艶のある声。
それに乗せて言葉を吐いた彼は、首を横に振って副会長からの言葉を否定した。
「ダウト。僕の目は誤魔化せないよ夢月。」
「そんなに言うなんて、何か証拠でもあるの?鈴。」
麗しい夢月が、優雅に紅茶を啜って首を横に倒す。
はぁぁぁぁ今日も夢月ってば最高に綺麗だなぁ。世界一紅茶が似合ってる。
ていうか何あの妖しい笑み。私を殺す気なんじゃないの、エロ過ぎ。
死因:悶絶死。っていう世界初の事例出せそうなんですけど。
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