第30話

まだ午前中だというのに、夏の陽射しは容赦なく私達を照り付ける。




地面に伸びている繋がった三人の影は、やはりどう頑張っても捕らわれた宇宙人の図にしか見えない。




「真白、今年の夏は絶対に海に行くぞ。俺はどうしても真白の黒ビキニが見たい。」


「あんた前にも似たような事言ってたよね、下心しかねぇな。」


「そうかな?真白は肌が雪のように真っ白で綺麗だから、きっと白のビキニが似合うと思うよ。」


「え、本当?夢月。じゃあ白にしちゃおうかな。」


「色々可笑しいし可愛い子ぶる相手間違ってるだろ。紫陽花に猫被ってんじゃねぇよ。」





あらあら、何を言っちゃってるのかしら。



私は可愛い子ぶってるんじゃなくて元々可愛いんだよ、死ぬ程努力したんだから。



あと最近気づいたんだけど、夢月に猫被るのはもう癖になっててすぐに抜けそうにはないらしい。





「楽しみだね、真白と二人で海に行くの。白い水着も一緒に見に行こうか。」


「ちょっと待て、めちゃくちゃさり気なく俺が除外されてんだが??」


「違うよ鬼帝君、さり気なくじゃなくて分かりやすく除外してるんだよ。あはは。」


「あははじゃねぇよ!!!この腹黒が!!!」





駄目だわ。


もう一生かかっても剣が夢月に勝つ日は来ないな。




両者の間に挟まれたまま、私は大きく欠伸を零す。




「もう真白の家か。あっという間だな。」




昨日寝るの遅かったからかな、睡眠時間が足りてないのかも。


やだやだ美肌の大敵じゃん、今夜は入念にパックして早めに寝ないと。





「……おい、何か真白の家の前に誰か立ってるぞ。」


「え?」





隣から耳を突いた剣の一言で、私の脳内から美容の事が掻き消された。

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