第31話

無意識に伸びる視線の先。



私の家の前には、確かに人影が確認できた。



風に綺麗な髪を靡かせている人間の後姿。華奢な背中と細長い腕と脚はまるで人形のよう。





「予想以上に早いご到着だね。」





珍しく、困惑を滲ませた声色で夢月が言葉を落としたと同時に、数十メートル先にいる人物がこちらへと振り向いた。




「なっ……。」




こちらからでもはっきりと見える、可憐で麗しい顏。


それに対して、剣が驚いてるのが顔を見なくても分かる。




徐々に近づく私達と、その人物との距離。



相手が漸くこちらの存在に気が付いたのか、私とその人との視線が絡み合った。





「可愛い。」



みるみるうちに、愛らしい笑顔を浮かべる視線の先にいる人物に、思わず本音が漏れてしまう。




「真白の方が何億倍も可愛いよ。」




きゃっ、嬉しい。



私の呟きを拾ったのか、紳士な夢月の一言が心を擽る。






「真白!!!!」




数メートルまで縮まった距離。



髪をそっと耳に掛けた美しいその人物が、私めがけて駆け寄って来る。





「真白!!!!」


「うをっ。」




一時停止してくれるかと思った私の予想を華麗に裏切り、躊躇なく私へと飛び付いて来た人物。



その拍子で、繋がれていた両手が離れそのまま私の身体は地面へと倒れた。



あ、危ねぇ。



ギリギリ受け身とれたよ、武術やってて良かったよ。





私の胸に埋めていた顔を上げた人物は、太陽よりもキラキラと目を輝かせてもう一度激しく私に抱き着いた。




欧米か。

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