第23話
羞恥心に溺れて死にそうになっているこちらを余所に、夢月はそのまま私の身体を抱き寄せた。
ふわりと香る彼の良い香り。
やっぱり体内で薔薇でも育ててるんじゃないだろうか、そうじゃなきゃこんなに毎日良い匂いする訳ないよね。
「真白ってば隙が多いね。」
「へ?」
「それとも、俺の事意識してないの?」
「………。」
「俺、まだまだ諦めないよ。真白の事が好き。落とすつもり満々だからね。」
「……っっ。」
甘美な笑みを湛えて、束ねていた髪をそっと撫でてくる夢月は、多分少女漫画から産み落とされたんだと思う。
それくらい口を開けば私の胸をドキリとさせてくる。
「俺だって男なんですよ真白さん。分かりましたか?」
「は、はい。」
「それではよろしいです。」
相変わらず背後に満開の花を咲かせつつ、私に微笑みかける幼馴染のわざと変えられた口調に心は大興奮。
それではよろしいですって……あなた…分かってるじゃないの。
あの頭がザビエルなりかけの数学教師なんかじゃなくて夢月が先生だったら良いのに。
そうしたら私だって気合入れて数学のノートに先生をデッサンするのに…間違った、数式をメモするのに…。
「ところで真白、ずっと気になっていたんだけど。」
私を腕から解放しないまま、彼は首を横に倒して苦笑を滲ませた。
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