第9話
春の桜も散り、日差しの照りつける五月。
我が校に体育祭がやってきた。
いくつかある種目で何に出るかをクラス皆でワイワイガヤガヤと騒がしく決め合って、私はリレーと綱引きと、他にもいくつか出る事になった。
走るのはそんなに早くはないけど、走る事自体は嫌いじゃないので、数に入れてもらったのだ。
「お!マジか!」
「雨宮が行ったぞ!!」
「わー!結本さんと手を繋げる権利が羨ましい!!」
「クッ、眩しいぜ……!!」
借り物競争三年生の部で、『カノジョ』というお題を引いた紫暮くんが、結本先輩の手を引いて走る姿を見てしまった。
「ぁ」
嗚呼、と。
手を取り合って走るその眩しい笑顔に、なんだか泣きそうになった。
私じゃないんだなあ、って。
そう思ったから。
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