第95話

どんな人間にも調子が悪い時とか、憂鬱な日とかが必ずある。




「何で学校来てんの~?」


「死ねよ。」


「また休みも男に媚びてたんでしょ?どうせ。」



私は今、まさにそれだ。


憂鬱なんてもんじゃない、軽く死にたい。




凝りもせずに私の上から被せられる冷水。


そして投げられる語彙力の欠片もない暴言。



いつもなら相手にもしない。


心にだって何も響かない。




「虎雅にもすぐ飽きられてる癖にさ~。」


「生徒会にもウザがられてるって。」


「夢月君にとっては邪魔でしょこんなの。」




だけど、今日だけは違った。


顔も性格もお粗末な女共から浴びせられる言葉が、どれも私の心を締め付ける。


ただでさえ崩壊寸前だった精神が、ズタボロだった。




「夢月君の隣にいられて鼻で笑ってるんでしょ、うちらの事。」


「良いよね、幼馴染って。それだけで可愛がって貰えるんだからさ。」


「毎日さぞかし愉快なんだろうね。」




ふざけんな。


好き勝手言ってんじゃないわよ。




「………。」



まだマシだったよ。


幼馴染を理由に可愛がられていたならまだマシだった。




でも全部嘘だった。


優しい言葉も、態度も、笑顔も…全部全部嘘だった。


夢月にそんな嘘をつかせてしまったのは紛れもなく私だ。




俯く私に、またも冷水が容赦なく襲い掛かる。



もう限界だった。


弱音なんて吐きたくなかったけれど、耐えられそうになかった。




辛い。


辛いよ。



苦しくて、息をするのもしんどい。


止むことのない罵声に、耳を塞ぐ。




誰か。


誰か……。




「助けて……。」



希望なんてなかった。無意識に零れたその言葉。




「言うのがおせーんだよマカロン。」




降りかかった声は、すっかり覚えてしまった物だった。


上昇させた視線の先。




「真白傷つけた奴誰。全員殺す。」


「電光石火で俺参上!」




そこには何故か、麗しい飛鳥と馬鹿な肉欲獣が揃っていた。








いやここ女子トイレ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る