第96話

想定していなかった人間達に混乱する。




「んなシケた面してんな、お前らしくねぇ。不細工だぞ。」


「うっさい、可愛いって言え。」



約二週間ぶりにも関わらず、デリカシーの欠片もない発言を向けられる。


しかも「何処が可愛いんだよ。」って真顔で聞き返された。


撲殺してやろうか?あん?




「真白は可愛い。一番可愛い。」


「飛鳥……。」


「だって抱き心地可愛い。」



抱き心地かよ。


何だ抱き心地可愛いって。表現可笑しいだろ。でも美形だから可。





「え…どうして虎雅が…。」


「な、何か用ですか?」


「そんなビッチに構わない方が良いですよ。」




分かりやすい程動揺しているのは、さっきまで毒吐きコブラの如く暴言を吐いてた女共。


しかも頬を赤く染めている。




「あ?黙ってろブス。ビッチは男の性欲満たしてくれる女神だろうが。馬鹿にしてんじゃねぇ。」


「そっちかよ。」


「マカロンは普段は可愛いけど、お前等はブスだ、性格もな。一度ガンジス川行って身を清めて来い。」



きっぱりばっさり言い切って踏ん反り返る肉欲獣に頭を抱える。


殺意しか覚えなかった女共にすら同情を覚える。





「なぁ、飛鳥お前もそう思うだろ?」


「真白寒い?これ着てて。」


「話聞け!!!」



自分のブレザーを脱いで上から掛けてくれた飛鳥の優しさが胸に染み渡る。


肉欲獣の話をフルシカトしてるところも好感しかない。




「遅くなってごめんね真白。」



続けて吐かれる温かい言葉に首を横に振った。



「えっ…きゃっ…。」



頬を緩めたかと思えば、飛鳥に突然身体を抱き上げられた。


反射的に腕が飛鳥の首へと回る。刹那、甘い香りが鼻孔を突いた。




「剣、そろそろ行かないと。」


「わーってる。」


「本当はお前達なんか殺してやりたい。…でも今日はできない。」


「だな。次真白に手出してみろ、俺がSNSでお前等の悪口拡散すっからな。」



何だその小さい嫌がらせ。


男らしさのないやり口に幻滅しかしない。




「「「………。」」」



しかも何でそれだけで怯んでるのこの女達。


全然怖くないだろ。





「じゃあ真白行こう。」


「え、何処に?」


「早く行くぞ、見つかる。」


「え、誰に?」




私の言葉を全て聞き流して、走り始めた二人。



余りの勢いに、飛鳥に掴まる事しかできなかった。

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