第91話

ピンポーン




響いたインターホンの音で、すぐさま起き上がった。


今日はお父さんもお母さんも出掛けていて私一人。



仕方ない。宅配便とかかったるいけど出るか。




ピンポーン



急かすように鳴る二度目のインターホン。


今向かってるんだからもう少し待ってよ!ボルトでもまだ辿り着けてないからな絶対。



「はーい。」


眉間に皺を刻みながら小走りで玄関の扉を開けた。




「こんにちは。」


「おっふ……。」




その先にいたのは周りに花畑を散りばめた夢月だった。


私服最高。萌え。



「な、な、何で?どうしたの?」


「お届け物です。」



口許を緩めながらケーキの箱を持ち上げた彼。


その箱には、私が好きなお店のロゴが入っている。



夢月単体だけでも十分最高なお届け物なのに、私が好きなケーキまで持って来るなんてこんな幸せな事ある?


え?私明日死ぬなんて事ないよね?




「夢月、パーティーに出席してたんじゃ…。」


「家族はまだホテルに泊まってるけど、一足先に帰って来たんだ。」


「そうなんだ。」


「うん、真白が変な人間と接触してないかなって気になって。」


「へ?」


「ていうのは冗談で、会いたかっただけ。」




もしかしなくても夢月って出身少女漫画?


絶対少女漫画から生まれた人だよね、じゃなきゃこんな女心を鷲掴みする言葉なんて言えないよね。




駄目だ。クラクラしてしまう。




「お邪魔しても良い?」


「全然邪魔じゃないよ大歓迎。」


「良かった。」




あんなに退屈だった気分もすっかり消え失せ、突然現れた夢月に心が躍る。



小さい頃からの癖で、リビングなどには寄らず、真っ直ぐ二人で私の部屋に入る。




「ずっと留守番してたの?」


「今日はね。一昨日は蘭と聖架と遊びに行ったよ。」


「知ってるよ。」


「え?何で?」


「ふふっ、秘密。俺も行きたかったな。」




唇に人差し指を当てた夢月は恐ろしい程画になりすぎていて、思わず写真を撮ってしまった。


永久保存だわこれ。

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