第90話
あれから時は過ぎ、高校生になった。
大人ではないけれど、子供でもない微妙なこの年頃。
夢月との関係性は、変わったようで変わっていない。そんな感じだ。
「暇だなぁ…。」
自室のベッドの上で寝そべって、天井を見つめる。
ゴールデンウィーク最終日だけれど、特に予定はない。
散々な嫌がらせ地獄から少しばかり抜け出せて、ここ数日は平和だった。
少し前までは、肉欲獣を雑木林に捨てたり、素敵な飛鳥が現れたり、可愛い変態の道梨を発掘したり、強烈でしかない宵にハグされたり…。
刺激だらけだったなとつくづく思う。
別に楽しかったわけではない。
ぶっちゃけ迷惑だったし、長年の夢月との関係も揺らいだし、おかげで嫌がらせまで受けるようになった。
決して楽しかったわけではないけれど、刺激が強すぎたのだろう。
「ゲームしたい。」
あいつ等のせいで、ここ最近の日々が異常に退屈に感じている。
このゴールデンウィークは稽古漬けだった。
二日目に蘭と聖架と買い物に行ったくらいだ。
あの二人は私に優しいし、やたらと私を女の子扱いしてくれる。それは女として当然嬉しいけれど、自分の柄じゃなくて窮屈さを覚えてしまう。
どれだけ繕っても、持って生まれた性格はそうそう変わってくれない。
え?夢月と遊べるチャンスだろって?
そりゃあ私だって夢月とデートできるならゴールデンウィークも興奮しきりで忙しくなるよ。
だけど残念な事に、毎年ゴールデンウィークは夢月が色々なパーティーに出席するせいで会えた事がない。
「変な虫が付いてないと良いけど…殺虫剤準備しておこうかな。」
あの容姿と性格だけではなく、国内随一の金融機関の御曹司である夢月は社交界に出向く事も稀じゃない。
家はお隣だし、小さい頃からずっと一緒に育ってきたけれど、ふとした時に彼の存在が果てしなく遠く感じるのだ。
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