第88話
胸を張って友達がいないと言える私に、勿論助けてくれる人間なんていない。
寧ろ嫌がらせ現場の横を通る女達なんかにクスクス笑われている始末。
教室ではあんなにか弱い人間ぶってる癖に、先輩に囲まれてる私を見て心底愉快そうにしている女をここ数日でやたらと目撃した。
見てるか男、女なんて所詮こんなもんなのよ。
蚊を殺しただけで「可哀想」とか教室ではほざいているけど、実際は血も涙もない人間ばっか。
私だってその一人だ。だから声を大にしては言えない。
「はぁ…着替えよう。」
何着制服を持って来てもきりがない。
だけど濡れたまま出る事なんてできやしない。
夢月を含めた生徒会メンバーにひたすら重ねてきた虚像とも言える自分のイメージを、こんな無様な姿で崩壊させるわけにはいかない。
友達ゼロで嫌がらせ三昧の日々を送っているなんて、死んでも悟られてなるものか。
「インスタさえ消せれば…かくなるうえはスパム通告しか…。」
こんな嫌がらせ、初めてじゃない。
夢月の隣に金魚の糞の如くひっついていた私を鬱陶しく思うのが女の性。
小学校も中学校も、それなりに嫌がらせを受けてきた。
そう、私は嫌がらせを受けるスペシャリストだ。
その度に必死こいて夢月の前ではいつも通りに振る舞っていた記憶が懐かしかったのに、早くもカムバック。
「碌な事がないわ本当に。」
あの日から、ぱたりと肉欲獣を含めた虎雅の人間に会う事はなくなった。
驚いた事に、復活を遂げたにも関わらず、肉欲獣は以前のような不純な行為で問題を起こす事もなくなった。
私にとっては好都合だ。
夢月と一緒に過ごせる時間が増えたし、夢月に心配をかける事もなくなった。
だけど…。
「ムカつくくらい自分勝手な奴だ。」
この嫌がらせの腹いせに一回くらい殴ってやりたいなんて思ってしまう自分がいる。
ここにはいない男の顔を思い浮かべて舌打ちを漏らしながら、新しいシャツに腕を通した。
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