第87話

とことんあいつ(肉欲獣)は疫病神だと思う。




濡れたシャツが肌に張り付く不快な感覚に、顔を顰める。




「調子に乗んなよ。」


「あんたなんか運が良いだけだから。」


「少しちやほやされてるからって馬鹿じゃないの。」


「生徒会だけじゃなくて虎雅にまで媚びやがって。」


「何でお前が虎雅の公式インスタに載ってんだよ死ね。」




投げつけらる罵声。暴言。


それから、本日何度目か分からないバケツ一杯の水を思い切り身体に掛けられた。


怪力かよこのゴリラめ。





「お似合いじゃん。」


「そんなに透け透けじゃ、恥ずかしくて生徒会の皆さんにも助け求められないね。」


「いい気味だわ。」


「そろそろ行こう、虎雅のインスタまだチェックしてない。」


「あ、私も~。鬼帝さんの写真あがってるかなー。」




だだっ広いトイレに独り残され、去って行く女達。


…何だこのベタすぎる嫌がらせ。




「思い切り濡らされた。」




全身びっちょびちょだ。


誰がいつあんな知能指数低い集団に媚びたかよ。



…確かに飛鳥の顔はタイプだから結構媚びたかもしれないけど、鬼帝にだけは絶対にない。




「くっっそぉぉぉおおお。インスタ消去させるの忘れてたぁああああ。」




後悔。


私とした事が大失態だ。





のそりと立ち上がるだけで、水を被った衣類が肌に密着する。



しかも何が腹立つって、私よりあんな馬鹿げたインスタが優先されているこの現実だ。



あんな男の写真がアップされているかどうかだけで、嫌がらせがあっという間に収束する事だ。



ふざけんな、どうせなら私への嫌がらせに集中しろ。




肉欲獣を保健室に置き去りにした日から一週間。



阿保みたいな虎雅のインスタに写真を投稿された私は、当然のようにモブキャラ的女共の目の敵にされ、嫌がらせの日々を送っていた。





鬼帝の野郎…呪う呪う呪う呪う呪う呪う!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る