第68話

「よし、これで完璧だな。」


「誰これ、やだこれ。」




何度か写真を撮り直した後、スマホの画面を見て満足に微笑む肉欲獣の横から覗けば、そこにはフィルターと加工が施された一枚が映っていた。



もはや原型を留めてない。



しかもこいつだけやたら光飛んでるし。ウザっ。





「これをインスタに上げれば終わりだな。」


「待て待て待て待て。」


「んだよ?」


「え?今何した?」


「インスタに画像アップした。」




肉欲獣の手からスマホを掻っ攫えば、今撮った写真が本当に上げられていた。



おい、#with#暴力女#マカロンってどういう事だこのハッシュタグ。




「これ何?」


「見りゃ分かんだろ、虎雅の公式アカウントだ。」


「はぁ?」




全然分からない。


理解不能。



クラスの女子が騒いでたインスタってもしかしなくてもこれの事か?




過去の写真に飛んでみれば、かなり更新されていた。



まず目についたスタバとドーナッツの写真。



#ブレイクタイム


え、ウっっザ。




次に目についたナイトプールで遊んでる写真。



#巨乳美女募集


欲丸出しかよ、どんな目的で利用してんだこいつ。




どれもこれも、わざわざ加工された写真ばかりだ。暇人かよ。


しかもフォロワーめっちゃいるじゃん。


イイねめっちゃ貰ってるじゃん。



暴走族の公式インスタって聞いたことないんだけど。


しかもそれがこんなに人気って世も末だな、終わったな日本。




「ちょっと、私が映ってるの消してよ。」


「無理。俺が盛れてるのに勿体ねぇだろ。」


「お前は頭の中に知識を盛れ。」


「あんだと?」




こんなのクラスメイトの女子の目に触れたらどうしてくれんだ。


ただでさえ嫌われているのにもっと生きにくい毎日になってしまう。




「早く消してよ!!!」


「無理だ。」


「じゃあモザイクかければ?ほら。」


「……何か無駄に卑猥な女みたいになってるじゃん!!!」




その解決しましたみたいな顔やめろ道梨。


叩きたくなる。




「頼むから消してくださいクソ野郎。」


「物の頼み方調べろお前。」




押し寄せる絶望に俯いて身体を震わせていると……。




「真白!!!真白いる?」



必死な形相をした夢月が部屋に駆け込んできた。



王子様キター。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る