第66話
「ちょっと整理させて。あんた達は皆虎雅って事?」
関わり合いたくないと思っていた集団。
いつも頭を抱えさせられていたその暴走族の名前を背負った人間達が、すぐそこにいる。
「ああ。俺様が総長で、こいつ等は手下。」
「幹部だから。あと僕は剣が総長なの認めてないよ、じゃんけんで勝っただけじゃん。」
「うるせぇ!」
どんな方法で総長決めてるのこいつ等。
通りで威厳もクソもない馬鹿が総長しているわけだよ、納得。
「私も幹部なの、趣味は洋裁で、可愛く作った服を可愛い人に着て貰うのが趣味なのよ。というわけで道梨!今日仕上がったこのワンピ着て頂戴な。」
嬉しそうにオネェが両手で広げたワンピースは、素人が作ったとは思えない程の出来だ。
それを押し付けられて飲んでいたいちごみるくを吹き出した道梨。
「いつも言ってるけど嫌だって言ってるでしょ。」
「だって、道梨しかいないんだもの、可愛い顔してる人間。」
「それ気にしてるんだよ!一々丁寧にそこ抉るのやめて。」
本人は心底嫌そうに顔を歪めているけれど、実際かなり似合うと思う。
顔は羨ましいくらいに可愛いし、身体も華奢な道梨が着ても違和感がない気がする。
「お願いよ道梨。絶対可愛いわよ。」
「やだ。」
「仕方ないわ…いちごみるく10本で手を打ちましょう。」
「乗った。」
プライド安!!!!
口角を上げてワンピースを受け取った道梨は、迷いなき足取りでドアの奥へと消えて行った。
「あれ、貴方が作ってるの?」
「呼び方は宵でいいわ。そうよ、ああやって服作るのが大好きなの。」
「素敵だね。」
「え…。」
「ん?」
「いや…気持ち悪いとか思わないのね、ありがとう。」
気持ち悪いわけがない、だって宵の顔がイケメンだから。
正直イケメンは何やったって許される。肉欲獣を除いてだけど。
「うん、あっちでエロ本読んでる人は純粋に気持ち悪いと思うよ。」
「違いないわね。」
「おい巻き込み事故やめろ!!!!」
エロ本を掲げて、ぎゃーぎゃー騒ぐ肉欲獣に白けた目を向ける宵とは仲良くなれそうだと思っていると…。
「着替えてあげたよ宵。いちごみるく10本、約束だからね。」
扉の向こうから、ワンピースに身を包んだ美少女が現れた。
はい、負けた。
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