第60話

どうしてこうなった。





「待ってよ、あんたの大きさなんて興味ないから別に見せなくても…「安心しろ、すぐに最大サイズにすっから。」」



微塵も安心できねぇ。


こんな恐怖を覚えたのは人生で初めてだ。



私の目の前で肉欲獣は一生懸命下着を覗きながら手を動かしている。


その一生懸命さ違う所で発揮しなさいよ。





「よし、良いだろ。」


「駄目だから。」


「今更照れてんじゃねぇ。」


「マジで嫌なの!!!!!」




都合の良い解釈ばかりをしてにやりと唇に弧を描いた相手が、下着のゴムに手を掛けた。




「出でよ、俺のスーパービッグ……いってぇええええ!!!!!」




下着がずり下がる寸前だった。


肉欲獣の股の間から伸びてきた手が、躊躇なく大事な部分を握り潰した。




「うをぉおおおお。」



目に涙を浮かべて、悶えながらソファから落ちていく肉欲獣。



何が起きたのかさっぱり理解できずに困惑する中、肉欲獣が視界から消えた代わりに背後に立っていたらしい人間が映った。




「ここではヤるなって言ってるじゃん。男と以外ここでのセックス禁止。」


「てめぇ道梨どうり、遠慮なしに握り潰しやがって……。」





パンパンと手を叩いて、いかにも汚い物を払うような行動をしながら床で瀕死状態の馬鹿を見下す人間。



その人間に私は見覚えがあった。




「あれ、男装女子だ。」


「だから普通に僕は男だって言っただろ!!!!」





女顔負けのぱっちりとした二重に、収まりの良いしゅっとした鼻筋、そして桜色のぷっくりとした唇。



間違いない、生徒会室で一人ハァハァ言ってた可愛い変態だ。





「あんた、どんな魔法使ったの?」


「え?」


「そこにいる睡眠人間。」


「……。」




可愛い変態が顎で指したのは、私の胸に顔を埋めて寝息を立ている飛鳥。



やだ、寝顔まで色気に満ちてるよ。




「飛鳥がどうかしたの?」


「その飛鳥。どうやって手懐けたわけ?この男、他人に興味関心ゼロの人間なはずだけど。」


「そうなの?」




随分と積極的に迫られた記憶しかないんだけど。



「さては薬でも盛ったなあんた。」


「失礼な!!!そんな事するわけないでしょ。」




あからさまに疑いの目を向ける人間は、やっぱり男には見えないくらい可愛かった。

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