第59話

飛鳥の中では清楚で可愛い女でいたかったよ。



あっさりと本性を暴露された悲しみに耐えるように両手で顔を覆う。






「ふふっ、強いね真白。格好良い。」


「え…。」




しかし返ってきた飛鳥の言葉は、予想していた物とは大きく違った。



恐る恐る手をどけると、私の隣に腰を下ろした飛鳥が頬を緩めていた。





「ちょっ…飛鳥……。」


「ん?」


「ち、近い…。」


「うん、だって真白の事、抱き締めたいから。」




心臓を鷲摑みされた気分だ。


どうしてこんなに美しいのよ、素晴らしい。萌える。好き。




「ひゃっ…。」


「ん、やっぱり最高。好き。」





身体を引き寄せられ、全身に飛鳥の温もりが伝う。



最高なのはそっちだから。





「人の前でセックスしてんじゃねーよ。」


「セックスじゃないから。あんたと一緒にしないで…って、え、何?」





私と飛鳥に跨るようにソファに乗ってきた肉欲獣に、にやけていた口元が一気に引き締まる。



理解できない行動に顔が引き攣る。





「気持ち悪いんだけど、どいてよ。」


「てめぇ、飛鳥と俺への態度違いすぎるだろ。俺にも優しくしろ。」




無理、死んでもこんな野郎に優しくするなんて無理。




「その軽蔑したような顔やめろ。」


「生憎、あんたに向ける顔はこれだけしか持ち合わせてない。」


「ちっ、生意気な女だな。」




今の言葉、そっくりそのまま返してやりたい。



他所の学校の女喰い散らかしてた奴がよく言えたもんだ。





「俺はてめぇとの約束を果たす為にここまで連れて来たんだ。」


「約束した覚えないんだけど。」


「しただろーが。療養期間、碌に女も抱けなかったからな。今の俺は絶好調だぜ。」




何の話をしてるのこいつ。


まるで理解できない言葉達に疑問が深まる。



そんな私の前で勢いよくズボンを下ろした肉欲獣は、躊躇なく己の下着に手を入れた。




「俺の息子がでかい所を見せてやるって約束したからな、ちゃんと見せて汚名返上してやる。」


「その行為そのものが汚名だよ馬鹿。」

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