第55話
登場したのは期待していた人物ではなかった。
ていうかもう二度と会うつもりもない人間だ。何でここにいるのこの男。
やだやだ疫病神の臭いしかしないよあいつ。目逸らしておこう。
何事もなかったかのように静かに私は机に突っ伏せた。
「な、何で開花の虎雅の総長がこんな所に…今は授業中だぞ、自分の学校に戻りなさ…「おい分かりやすい無視してんじゃねぇ。」」
貴様も数学教師の言葉を分かりやすく無視してんじゃないよ。
他人の目が一切気にならないのだろうか。
…気にならないからこんなに馬鹿なのか。
「さっき目合った癖にごまかしてんじゃねーぞ。こっち見やがれ。」
だから何様なんだ。
目合ったらどうするつもりだ。絶対骨折った復讐に来たんだよねこの男。
絶対顔上げられない。上げたら最後だ殺される。
「鬼帝さん見られるなんてラッキー。」
「本当にイケメンだよね。」
「はぁー惚れ惚れしちゃう。」
「インスタ通りのイケメンじゃん。」
周囲から聞こえてくるのはあの馬鹿男に向けて吐かれる女子生徒達の声。
アンラッキーの間違いなんじゃないの。
真面目に顔だけだよあいつ。
ていうかインスタって何?それ一番気になるんだけど。
バン
至近距離で大きく、乾いた音が聞こえたかと思えば強引に私の顔を上げられる。
すぐそこに迫った会いたくない男は、ニヒルな笑みを浮かべていた。
「よう、久しぶりじゃねーか。」
静まった教室に放たれる圧倒的な存在感。
一瞬にしてこの場の空気を己の物にしてしまった男の威圧は相当なものだ。
私の肩に手を置いてぐっと自分の顔を近づけた男の顔はやはり腹が立つけど整っている。
「……え、怖い…どちら様ですか?」
「何気色の悪い芝居打ってんだてめぇ、殺すぞ。」
軽蔑したような目を向けてくる肉欲獣の顔面をぶん殴りたい衝動に駆られた。
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