第49話
「最近、どうも視線を感じる。」
神妙な面持ちでそう漏らした聖架の声が、静かな生徒会室に溶けていく。
手元に用意された焼きたてのスコーンを食べながら、私は同意するように首を縦に振った。
因みにこのスコーンもついさっき聖架が作ってくれた物だ。
「実は私も感じてたの。夢月は全然気づいていないみたいだから黙っていたんだけど。」
「夢月も鈴も基本は会議ばかりであまりこの部屋にいないからな。蘭は鈍感だし。」
確かにそうだと思う。
現に今も、生徒会長と副会長である夢月と鈴は委員会会議に出席しているし、蘭は書記の仕事があるからと引き摺られて行ってしまった。
久しぶりに集まる生徒会。皆と一緒にいられるかと思ったけれど、結果として生徒会室にいるのは私と聖架の二人だけだった。
そしてやたら感じる視線。
「何処から誰に見られているのか見当がつかない。ただの気のせいかとも思ったが…真白も感じているのなら違うみたいだな。」
ぐるりと生徒会室を見渡した後、深く一息ついた聖架は何やら考え込むように頬杖を突いている。
まさか同じように視線を感じている人がいると思わなかった私は、仲間がいる事に内心安堵していた。
「何だか少し怖いね。」
本当は大して怖いとも思ってはいないけど、不安そうな表情を浮かべて目前の男を見上げる。
こういうのが男は好きらしい。
女の私からすると、本当に怖いと思っている女は絶対に「怖い」と言わないと思う。
あと、上目遣いか何だか知らないけどもう少し黒目が上にあがってしまえばそれはもう白目だからね。完全に失神してる奴だからね。
そんな本音は今日もきちんと呑み込んで、か弱くて可愛い女の子を演じる。
「大丈夫だ、何かあっても真白は俺達が守る。」
「うん、ありがとう聖架。」
頬を仄かに赤くさせた相手に、ここぞとばかりの笑顔を咲かせた。
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