第50話
静寂を切り裂いたのは、大きく鳴り響いた着信音だった。
「……悪い真白、蘭が書類を忘れたらしいから届けてくる。」
通話に応じた後、立ち上がってエプロンを脱いだ聖架が机の上に置いてけぼりをされていた資料を抱えた。
きっとその資料を忘れた蘭は、今頃鈴にこっぴどく注意されているのだろう。
落ち込む蘭の姿が安易に想像できてしまう。
「私が行こうか?」
「いや、真白はゆっくりしてろ。すぐ戻って来る。」
「分かった、お言葉に甘えて待ってるね。」
「ああ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
聖架が出て行った生徒会室に残されたのは私だけ。
男ばかりの生徒会だというのに、見事に整理整頓が行き届いている部屋は几帳面な鈴が徹底的に管理しているからだろう。
「…あれ、あのロッカーって何が入ってたっけ。」
埃一つない部屋を感心しながら眺めていた私の視線は、ある一点の場所で停止した。
視線の先にあるのは一つのロッカー。
私の記憶が正しければ、生徒会の人間が誰も使っていないと思われるそれ。
「夢月のお宝情報が隠れてたりして…。」
年中夢月で脳がやられている私の思考回路は単純だ。
何かしら夢月関連のグッズが入っていないかと、変態心を躍らせながら立ち上がる。
期待を膨らませつつも、どうせ中身は空なんだろうなと冷静な予想を立てながらロッカーに手を伸ばして勢いよく開けば……。
「ハァ…ハァ……え?」
「…は?」
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