第42話

地面に崩れる身体。



寸前で受け身を取れたから怪我は免れた…けど、身体が重い。


鼻を掠める甘くて優しい香り。



そして…倒れた私の上に乗っている一人の男。




いやいやいや、何で木の上から人間が落ちてきたんだ。




「……気持ち良い。」


「え?」




腰に巻かれた腕。


擦り寄るように男が私の胸元に顔を埋める。



はぁ?


ちょっとふざけないでよ、私の谷間に最初に顔を埋めるのは夢月の予定だったのに!!!




か弱い私の上に降ってきた挙句、平然と抱きついてくる男に顔が引き攣る。



神経図太すぎじゃない?


あと重いから早く退いて欲しい。




「抱き心地最高…よく眠れそう。」


「おい。」




この学校は変態しかいないの?そうなの?


遠慮なしに更に身体を密着させて来た男に殺意を覚える。





「気持ち良すぎる。離れられそうにない。」


「…あのすみません、早く退いてもらっていいですか。」


「嫌。無理。」




あーん?




首を横に振った後、私の胸に沈んでいた顔がゆっくりと上げられる。



透き通った灰色の瞳と目が合った。




「あんたの身体、好きだから離れたくない。」


「………。」




僅かに口角を緩めて、また私の胸に顔を沈めた相手にもう文句はない。




何故ならこの男が……。







「ずっとこうしてたい。」




めっちゃ美形だったからだ。



はい合格。

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