第41話

お前が行くんじゃないのかよ。



「何かあれば大声を出しなさい。そして逃げなさい。」


「助けにも来てくれないんですね。」


「お前なら大丈夫だ。」


「意味が分かりません。」




私の肩を掴んで何度も頷いているこの人間は、男としてのプライドが皆無なのか?



ついさっき女子に嫌われていると告白した私に、当然味方してくれる人間なんていない。




「……如月さんなら私も大丈夫だと思う。ありがとう。」



涙を拭って上目遣いで訴える女子生徒。


でも、口許が完全にニヤついている。


目潰ししたろかこいつ。





「……行ってきます。」


「おう、お前は俺の親友だ。きっとできる。」




こんな薄情な友達持った覚えないよ私。



クスクスしている女子生徒と、笑顔で手を振り続ける体育教師に見送られながら、何もしていないのに開花高校の正門を潜ることになった。






「敷地広すぎかよ、何処行ったのよボール。」




飛んだ方角も分からないのにソフトボールを探すのなんて至難の業じゃないの?



しかも校舎綺麗だし。


不良校の癖に落書き一つ見当たらないし。


不良のイメージ壊されたんだけど。





「ない。全然ない。」




あの女どんだけ怪力なんだ。


うちの学校に近い部分を捜索してみてもまるで見当たらない。



これ以上紫外線を浴びたら美白が損なわれる。


夢月は色白が好きだって言ってたから、死んでも日焼けなんてするものか。



一度ボール探しをやめて、近くにあった木陰に避難する。




「ああもう何処行ったの…「ねぇ、危ない。」」



絶望する私の上から唐突に降ってきた声。


自然と上昇した私の視界に飛び込んできたのは…。





「嘘でしょおい。」




私目掛けて落ちてくる人間だった。

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