第40話

涙目で開花高校を見つめている一人の女子。






あれ絶対計算してる。


たかがボール飛ばしただけで泣く奴がいるものか。




「心配しなくても大丈夫だ。ただ、ボールは今すぐ取りに行かないと。」




グローブを地面に投げ捨てた教師が、いつの間にか女子生徒の肩を擦っている。



騙されてるよあんた。


その女絶対演技してるよ。



私には分かるの、だって私がそうだから。





「でも先生…開花高校…私怖い…。」



甘ったれるな、お前が飛ばしたんだからお前が取りに行きなさいよ。



大粒の涙を頬に落とす女子生徒の圧巻の演技に冷ややかな視線を送る。




「そうだよな、怖いよな。不良ばっかだもんな。可愛い生徒にあんな危険な場所行かせる訳にはいかないな。」


「先生……ありがとうございます…。」


「よし……。」




女子生徒に替わってボールを取りに行く気らしい。


立ち上がって膝の砂を払った後、体育教師は爽やかな笑顔を浮かべた。





「如月、頼んだぞ。」



「どうしてですか納得できません。」

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