第13話

ちらり、壁に掛かっている時計を見る。



かれこれ、今日の分の仕事を片してから1時間が経過しようとしている。




「夢月はまだなの?遅いな。」



鈴に言いつけられて雑用をさせられている蘭が、机に突っ伏せながら声を発した。



実は私も全く同じことを思っていた。



「ほら、最近の問題の件での職員会議だからきっと長引いているんだよ。今回は夢月まで呼ばれてるんだから、事態は深刻なのかもね。」



最近の問題。


その単語に、この場にいる全員が疲弊しきった顔を見せる。



そして私の不安も募る。


ああ、どうしよう、会議に向かう途中で得体の知れない女に言い寄られていたりしたら。


そのまま汚物でしかない胸とか押し付けられてたら。



あり得る。


あり得すぎる。



そんな女がいたら即刻排除しないと。普通に邪魔。ただの害。




「でもさすがにそろそろ帰って来るんじゃない。幸い、今日は静かだし、一緒に帰れると良いね真白。」




頬杖をついて微笑む鈴に、私は素直に首を縦に振った。




「うん。今日こそは帰りたいな。」




何度も夢に見て、死ぬほど憧れていた彼との登下校。



勿論中学一年から二年まではずっとしていたけれど、高校生ってだけで少し大人な関係になった感じがして胸が弾むものだ。


必死に勉強して漸く掴んだ入学の切符。


そしてやっと着られた彼と同じ校章の入った制服。




「似合うよ。」彼がそう言ってくれた時、嬉しすぎて天に召されそうだった。


…否、まだ彼のお姫様になれてないから召されるつもりなんて微塵もないけど。這ってでもこの世にしがみついてやる。

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