第11話
「真白…食べない?」
ソファの上で膝を抱えて座った男が、悲しそうに私を見上げる。
身体が解放されて自由になったかと思えば、今度は精神的に窮屈さを感じる。
おいおいやめてよ、何でそんな可愛い顔するの。
まるで捨て犬じゃん。
垂れた耳と尻尾まで見えてきたよ。
どんなに性格は違えど顔は鈴と同じなわけで。
つまりはイケメンなわけで。
イケメンに落ち込まれて手を差し伸べない女がいるだろうか。
いないと思う。少なくとも私には無理。だってイケメンが好きだから。
「シュークリームなら…明日でも大丈夫だ。冷やせば良いし。」
なんてこった。
今度は左隣の男までシュークリームを眺めながら落ち込み始めたぞ。
見た目に似合わず本当にデリケートだよね、プレパラート並みに簡単に砕ける心してるよね。
頭を抱えたくなるけれど、こんな面倒臭い状況になっても悪い気がしないのは多分左も右もそこにいるのはイケメンだからだ。
目の保養にはうってつけ。
…やっぱり彼には及ばないけど。
「勿論いただくよ。チョコもシュークリームも。折角だもん、食べたいよ。」
「「真白……。」」
私の返事に顔を上げた両サイド。
ぶんぶん揺れる尻尾が見える。犬と狼かよ。
「二人ともありがとう。」
笑みを貼り付けて、チョコレートの包みを剥ぐ。
あーあ、今日は夕食抜いて運動しなきゃな。
カロリーオーバーだ。
口に広がるカカオの香りを感じながら、そんな事を思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます