第10話

視界いっぱいに広がる金色。


窮屈さを覚える身体。



どうやら、何者かに抱き締められているらしい。





「こら蘭、真白から離れなよ。」




鈴の注意する声に反応した金色が動き、視界に映るのは鈴と全く同じ顔。



その顔がうっとりした表情で私を眺めている。





「今日も可愛いね真白。」




とりあえずどいてくれる?窒息しそう。


そう言いたい気持ちを抑え、わざとらしく頬を緩める。




「ありがとう、嬉しい。」




みるみるうちに赤く染まる顔。


見事な金色に染められた髪を搔き乱しながら、男が私に紙袋を手渡した。




「これ、駅前の人気のチョコ。真白に食べて欲しくて買って来たから食べて。」




それはすぐに売り切れる、行列が絶えないショップのロゴが入った袋だった。




「蘭、そんな物を買いに行ってたの?その間、お前の仕事も全部真白がやってくれたんだよ。それに、今日はもう聖架が作ってくれたシュークリームがあるんだから真白もチョコは入らないよ。」




少しの怒気と呆れを含んだ言葉を投げつける鈴。


それに対して、分かりやすく落ち込む目の前の男。




同じ遺伝子を共有しているはずなのに、こうも人格に差が出る物なのか。


毎度のことながら、この二人に関しては本当に血が繋がっているのか疑問になる。

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