第8話

「まさか、それだけはないよ。真白を生徒会書記に推したのも夢月だよ、鬱陶しいと思ってたらそんな事しないよ。」


「そうだと良いな。」




ただ単に人手が足りなかっただけなんじゃないだろうか。



だとしても、生徒会書記という座に就けたおかげで、学年も違う彼と一緒にいられる時間が増える事は喜ばしい事だ。



…最初の頃はそう思っていた。




「真白、これ。」



低い声がすぐ近くで落とされ、目の前に置かれたのはシュークリーム。



隣を見上げれば、長身で無表情の男が立っていた。


短髪の黒髪に両耳に光るピアス。野獣を彷彿とさせる鋭くもバランスの取れた顔立ち。



それに似合わないエプロン姿。




「今日は、生地がうまく膨らんだ。」



随分嬉しそうだ。


感情をあまり表に出さないけれど、接している内に分かるようになった。


キッチンから良い香りがしてたのはこれのせいだったらしい。




「美味しそう。」


「早く食べろ。真白の為に作った。」


「うん、いただきます。」



更に大量に乗せられた内の一つを手に取り口に含む。


プロ顔負けの生地に詰まったバニラが香るクリーム。




「美味しい!!!」


「良かった、たくさん食べろ。」



もう一つ、大量にシュークリームが乗った皿が運ばれてきた。



待て待て待て、こんなには食べられないから。

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