第7話

窓から見える桜の木。



満開に花が咲いていた時に、初めてこの高校の門を潜ったあの日がもう既に遠く感じる。



窓に反射して映る自分は、ずっとずっと憧れていた制服を纏っていた。



彼と同じ高校の制服。


それだけで心が躍る。




一年という歳の差は小さいようで大きいと思う。


だって、彼と学校が離れていた中学三年の一年間は毎日心が死んだようだった。




「僕からしてみれば、分かりやすいんだけどね。」


「え、何が?」


「ううん、何でも。真白は可愛いから、きっと夢月むつきも気が気じゃないだろうなと思って。」




不意に出た彼の名前に、胸がドキっとする。


すぐに眉を下げた私は、苦笑を落とした。




「それはないよ。それよりも、高校まで同じだから夢月に鬱陶しがられてないか心配。」




あーあ、自分で言っていて傷つく。


彼の事になると自信が微塵もない。



形振り構わず彼の後を追ってここに入学したけれど、冷静に考えて私かなりウザくないか?


優しい彼は「嬉しい。」と言ってくれたけれど、本心ではどう思っているのか分からない。



現に私はいつだって、本心を隠して嘘を吐き散らかしているからだ。

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