第72話

開け放たれた大きな扉から、堂々と入る榊に続いて向かう篠宮。


…いやまぁ、貴方方にとっては我が家に帰るような感覚なのだろうけど、私達にとっては未知なる場所への一歩な訳で。




「え、え、待っ、待ってぇえ…」


美織がめちゃくちゃ緊張してあわあわして焦ってるからちょっと待ってあげて。



「美織、深呼吸して。大丈夫大丈夫」


「う、うん、すー、はー、すー、

…ううう、」


ありゃ、緊張しまくってるわ。

少し休ませて…


なんて考えてたら。





榊がこっちに戻って来て、美織に手を差し伸べる。



「大丈夫だ。…来い」


「ぁ、……うんっ!!」



するりと、私の手から離れて行く美織。







その後ろ姿を眺めて、少し寂しく思ったりなんかして。



「美織、そろそろ私離れ出来る感じかな?」


「おや、寂しいですか?巴衛さん」


「…少し、ね。…さて、私らも入るか、篠宮」


「…ほんと、貴女は肝座ってますね…」


「なんか言ったァーー?」


「いえー?」

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