第53話

そして、車を呼んで倉庫に連れていく。さすがに、僕達が女の子を運ぶ姿を見られたら面倒なのでね。




静かな車内に一つの通知音。




「あ?」


「この子のケータイじゃないですか?ほら」



音の出元、この子のカバンからケータイを取り出す。



「何勝手に出してんだよ」


「勝手に連れてきてる志都には言われたくないですね」


「…ちっ」



鳴り響くケータイをスルーする訳にも行かず、

失礼して着信相手を確認する。



「…巴衛、ですか」


「…巴衛?さっき助けてって言ってた奴か」



嗚呼、志都がイライラしてますね。

…この子の彼氏か何かですかね?


この巴衛という人には身を引いて貰えると有り難いですが、それについても話さなければ。


「少し、この巴衛さんとお話させてもらいます。静かにお願いしますね?」


「…ああ」




スヤスヤと、眠る女の子を大事そうに抱きしめて目を瞑る志都。…これは、この子。


(もう、逃げられそうにありませんねぇ)


なんて、思わず苦笑いになるのは許して欲しい。



さて、音楽が着れる前に出ますかね。


音楽が止む前に電話の向こうから聞こえてきた声はーー、



「…もしもし?美織??」


少し低めの、透き通った柔らかな女性の声。


「…!?」


「ちょっと、こんな時間までなにしてるの?大丈夫?…ねぇ、聞こえてる?美織??」


女性でしたか。単なるコチラの勘違いですね。




「初めまして、巴衛さん」


少し驚きはしたが、

すぐさま切り替えて出来るだけ優しく問いかける。




「……ーーーおい、誰だお前」


すると、とても低い声が帰ってきた。

その声には、僅かな殺気も。


志都が、ぴくりと反応した。相変わらず殺気には敏感ですね。それより、この人は…只者では無いみたい様ですが。

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