第95話

教えてもいないというのに、何故私の自宅からの最寄り駅を知っているのだろうか。


そんな疑問が沸かなくもなかったが、相手が昴晴先輩なので開きかけた口を閉ざした。



この人間の情報網の恐ろしさを理解しているからである。スパイ活動でもしているんじゃなかろうか。はっきり言って、そう疑わずにはいられない。




「さぁ到着だね。霰は素敵な美脚を探して、次曇は素敵なお人形を探すんだよ、出会いは一期一会だからね。」


「はぁ……最初に言っておきますが、家、何にもないですよ。」


「紅茶とケーキを出してくれれば平気だよ。」


「厚かましい人間ですね門前払い決定です。」




招いてもいないのに迎え入れる私は一切平気ではない。


当然のようにおもてなしを希望する相手に青筋が浮かびそうだったが、この人に常識を求める自分が愚かだと感じて起伏の激しかった精神が落ち着いた。



いつもなら私一人しか下車しない市立南青雹中学校前駅。


しかしながらたった今、四人揃ってホームへと降り立った。




感想としては「どうかこれが夢なら醒めて欲しい」この言葉に尽きる。

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