第94話
いつもならいるはずの華やかなピンク色は不在である。
「ごめんねぇ、妹のテレビ収録の観覧当たったから興奮してくるー!!!しーたんのお家は今度行くねん。」
お昼休みが終わり教室へ帰る途中、雷知先輩からその伝言を授かった。
永遠に来て頂かなくて結構である。さようなら。
一人減ったとて騒がしい事に変わりないのが性吐会。週に三回だけの活動日。
活動内容は毎度、政権を掌握している男の言葉によって決定される。
各々の性癖を語り合い、尊重し合うという名目ではあるが、全員が全員、見事に性癖が違うせいで語る必要がないらしい。
それじゃあすぐにでも解散しろ。声を大にして提案したい。
「次は市立南青雹中学校前。市立南青雹中学校前でございます。」
電車内に響く停車駅を知らせるアナウンス。
それを聞くや否や、昴晴先輩が最初に起立した。
「さぁ、次の駅で下車だよ。時雨ちゃんの地元観光楽しみだね。」
もういよいよ「観光」とはっきり言っているぞこの男。
猫っ毛の柔らかな髪を耳に掛ける仕草を見せているだけだというのに、昴晴先輩からは妖艶な雰囲気がどんどん溢れ出ている。
目に毒だ。そう思って視線を逸らせば、彼を見てうっとりとしている女性が大勢いる事に気が付いた。
騙されてはいけない、この人もあの人もその人も、皆奇想天外な変態奇人である。
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