第90話
どうやら私が何かしらの発言をするまでは、この視線から解放される事はなさそうである。
さてどうしたものか。
変に黙秘を貫くのも余計に怪しまれるに違いない。
「あーえっと、一応同じ中学校でした。全然仲良くはなかったですよ。」
これが咄嗟に放った私の回答である。我ながら当たり障りのない素晴らしい出来だ。
刹那的に脳内で過去の記憶がフラッシュバックしたけれど、できるだけ平静を装って食事を続ける。
「やっぱそんなもんだよねぇ~。」
すっかり興味が失せたのか、そう言いながら雷知先輩は頬杖を突いて唇を尖らせた。
この人はどういう表情をしても一々可愛い。それを正面から拝見している私の心が不意に高鳴ったので、慌てて言い聞かせた。
忘れてはならないぞ、この男は幼女に性的興奮を覚える変態だぞ。
「時雨ちゃんそれ本当?」
「…へ?」
COLORsの話題は終了したと思い安堵仕切っていた所で投げられた問い掛けに、心臓が大きく脈を打って息を呑んだ。
泳いでいた私の視線を、いとも容易に絡め捕った相手の澄んだ瞳。
「COLORsと仲良くなかったって、本当?」
同じ質問を復唱した彼が、首を横に折った。
全てを見透かしているようなそれが、酷く居心地を悪くする。
私はやっぱり、昴晴先輩の眼が苦手だ。
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