第80話

月、水、金曜日のみの活動という建前こそあるものの、これでは実質毎日が性吐会活動といっても過言ではあるまい。



何が嬉しくて私の薔薇色高校生活を剥奪した人間と毎日顔を合わせねばならないのか、ふざけるな。そんな反抗心が芽生えなくもないが、何を隠そう私は孤立した人間だ。


昼休みの教室に耐えきれず、結局脚が自ずとここへ向かってしまうのだから文句は言えない。




「……何ですか。」




自らの分と、雷知先輩の分の弁当が入っている鞄を抱えている私は、さっさと室内に入って腰を下ろしたいのだが、この悪の権化が行く手を見事に阻んでいる。



腹立たしいが今日も今日とて麗しい昴晴先輩へ視線を向け、道を譲れという気持ちを込めて質問を投げる。





「時雨ちゃん。」




艶のある声が私を呼ぶ。


深刻な形相を見せる相手の雰囲気がいつもと違う様な気がして、ほんの僅かに不安を覚えた。



こうして黙って佇んでいれば、ただの芸術品である。どの角度から見てもどの距離から眺めても、この人はとにかく麗しい。

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