第72話

まさかこれ程までに喜んで貰えるだなんて思ってもみなかった。


嬉々とした瞳を揺らして「楽しみぃ~」と笑顔を咲かせる雷知先輩を直視できない。



何故か。無駄に美しくて色気に満ちているからだ。




「僕はデザートに時雨の脚を舐めたい。」


「黙って貰えますか霰先輩。」




そそくさと食事を終えて、やけに刺さる視線は感じていたけれど、そんな不純な事を考えていたのか。


何がデザートだ。唾液塗れの脚のまま私に午後の授業を受けさせるつもりか。



断固拒否を貫かれた事が心底不満だったのだろう、霰先輩は唇の先を尖らせて明瞭に不貞腐れた。




「あ、そっか。時雨に睡眠薬飲ませてその隙に腕を縛れば時雨の脚、舐め放題だ。」


「人の脚を食べ放題みたいな扱いするのやめて下さい。」




何より、酷く真剣な表情で言う台詞ではないだろう。


名案だと言わんばかりの霰先輩の表情には、怪しい微笑が添えられている。



その一部始終をしかと確認した私の全身に走る戦慄。無邪気にそんな猟奇的犯行計画を打ち明けないで頂きたい。


霰先輩なら実行に移してしまいそうである。だからこそ余計に恐怖なのだ。

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