第71話

「ホントだー。しーたんのお弁当めたんこ美味しそうじゃん!しーたんママが作ってるの?」



お次は正面からお褒めの言葉を頂戴した。


そこに座っている雷知先輩は、カロリーメイトをナイフとフォークでわざわざ切って食べている。



まさか昼食の内容まで奇妙だとは。この人達はとことん人の目を気にして生きていないらしい。本当に日本人か?




「いえ、自分で作ってます。」


「え?そうなの!?凄いじゃん!」


「ありがとうございます。先輩は毎日それを食べてるんですか?」


「そうなんだよね~。俺ん家絶賛父子家庭だから基本手料理食べる機会とかないの。」


「それじゃあ雷知先輩のお昼のお弁当作りましょうか?」



しまった。


そう思っても、つい咄嗟に口を突いて出ていた言葉を戻すことは不可能だ。



余計な事を言った自らに猛省している私の正面で、雷知先輩が驚いた表情を浮かべている。




「…良いの?」


「え?」


「本当にしーたん俺のお弁当作ってくれるの?」




これは間違いなく自分が蒔いた種である。認めざるを得ない。


首を横に倒す雷知先輩に、私は苦笑を滲ませて頷いた。



ええい、弁当の一つや二つ増えたって変わりやしない。




「嬉しい!!!すっごい嬉しい!!!ありがとうしーたん!!!」




子供みたいに純粋に喜ぶ雷知先輩の反応を受けた私は、考えるよりも先に言葉を出して良かったのかもしれないと思った。

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