第69話

次曇先輩を一瞥する。


アッシュグリーンに染められた髪は無造作にセットされていてとてもよく似合っている。何と言っても鼻ピアスと眉ピアスの主張が実に激しい。


どうしても目線がそこへ集中してしまう。



かなり怖い雰囲気を纏っているけれど、カナちゃんとミユちゃんに対してはとても優しく顔を綻ばせる一面がある事は昨日で勉強した。



人の外見に騙されてはならない。この性吐会に入会したせいでつくづくそう実感する。


誰一人として外見からの印象と、実際の性格が合致していない。ある意味凄い。




「そんじゃ、つーちゃんのご機嫌が斜めになる前に食べよっか。」




溌剌はつらつとした口調でそう放った雷知先輩が、「食事するからおーわり」と独り言を続けて投影機の電源を切った。


どうやらそういう常識はあるらしい。もう意味が分からない。食事の時には娯楽を休止する常識はあって、どうして幼女に興奮を覚えてはいけないという常識は欠落するのだ。



……ははーん、天文昴晴と幼馴染だからか。そう考えると心底納得できる。




「それじゃあ皆、手を合わせてー!」




まるで一家の大黒柱のような昴晴先輩の号令に、反射的に手を合わせてしまった。




「いただきまーす。」


「「「いただきまーす。」」」




不良のレッテルが貼られた性吐会の集う昼休み。


視聴覚室には、全員の声が響いて消えた。

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