第56話
心身共に疲れ果てながらどうにか辿り着いた教室。
穏やかな生活を送っていたにも関わらず、私は教室にいた人間全員から視線を向けられた。
恐らくこういう視線の事を「冷徹な」と形容するのだろう。このような眼を向けられるのは我が人生において二回目である。
僅かだが息が止まったし、心臓も止まったような気がした。
今まで普通に迎え入れてくれた空間が、突如として冷遇へと様変わり。そりゃあ多少は驚くに決まっている。
まだ友人のグループが定着していない新入生の教室は、腹の探り合いと激しい心理戦の毎日だ。
その最中でもそこそこに良いポジションを死守していたと自覚していたのだが、この様に、あっという間にカーストの底辺へ堕落してしまうのが学校という狭き箱庭の恐ろしい所であると思う。
「一色さん。」
氷河期かと問い質したくなるまでの冷たい視線に疑問を抱いていると、私の元へ一人の学友が駆け寄って来てこう訊ねられた。
「一色さん、あの性吐会に入会したって本当?」
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