第57話
たった一言。されど一言。
その質問ですぐに自分へ浴びせられている冷遇の真意を理解した。
それから次に、天文昴晴への三度目の殺意を覚えた。
「うん、ちょっと事情があって所属する事になってしまったの。」
「そ、そうなんだ。」
見よ、この心底ドン引いた人間の眼を。どうにか口角を吊り上げているけれど、全然笑えていない。どうせならしっかり作り笑顔を貼り付けてくれ。
補足をしておくとすれば、先陣切って私の元へ駆け寄って来た目前の女子生徒は、この教室のカースト上位に君臨する人である。
まるで漫画で描かれるようないじめの幕開けだなこれは。テンプレート過ぎて笑えてしまう。
冷静にそんな事を感じられるのはやはり、私が数年前よりは精神的に強くなったからなのだろうか。
「性吐会って、この学校で一番浮いている組織なんだよ?」
そうでしょうね、あれ以上に浮いている組織があったら是非拝見願いたい。
あとそういう重要な情報、もっと早く言って貰っても良いですか。
「今まで一色さんとお弁当一緒に食べたりしてたけど…ごめんね、もうこれからは野蛮な性吐会に属している一色さんとは一緒にいられないの。」
努力して目を潤ませなくても大丈夫だ、泣きたいのは私の方なのだから。
踵を返して、カースト上位の仲間がいる所へと駆けて行った彼女の華奢な背中を眺めながら、しみじみと思った。
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