第47話

机の下という極々狭小な空間での大乱闘が始まると思った。


ここにいる誰もがそう思った。


少なくとも私はそう思った。




それなのに……。




「どうしよう、僕の理想の太腿みーっけ。」



昴晴先輩の命が散る事はなく、代わりに霰先輩の蕩けた声と共に私の内腿に突然手が這いずり回った。


あっという間に全身を襲う悪寒。




急な刺激に吃驚して椅子を引いたら、私の内腿を撫でて頬擦りする霰先輩まで一緒に出てきた。


嘘でしょう、最強に気色悪い。




「ちょっと待って下さい霰先輩。」


「やだ。ずっとずっと求めていた理想の太腿だもん。」


「ひっ…。」



一体どうなってるんだここの秩序は。


本物の宝物を発掘したような歓喜に満ちた表情で、私の内腿をスリスリと撫でる相手に恐怖しか感じない。




「あらららら、これはこれは意外な展開じゃーん。」



呑気に口笛を吹いてる場合か。


助けろ。救助をしろ。




「ふぅ~やれやれ。僕は助かったんだね、やはりお天道様は僕の行いをよく見て下さっているね。」




黙れ。この詐欺師が。


しかも今日は曇りだからお天道様も見えないはずだ。それなのに窓の外を見るな。天を仰いで微笑むな。

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