第44話

恐らく机の下で、絶望した形相をしているのだろう。


そこを覗いている雷知先輩が腹を抱えて笑っている。




「あはははっ、昴晴めっちゃ不細工になってるよ傑作!!!」



この人もこの人で大分悪質である。


仮にも幼馴染であるはずの人を助ける素振りはまるで見せず、スマホを向けて連写。




「ねぇ昴晴。」




ここに来て急展開。


登場してからずっとふんわりとしていた口調だった霰先輩の声が、津軽海峡冬景色へと一変した。




ガタッ




下からの衝撃で揺れる無人の机が、逃げ隠れしている卑怯なおっぱい星人の動揺を表している。





「避難訓練も良いけど、僕の宝物はどうなったの?」




まさかのおっぱい星人大ピンチ。


てっきりこのまま昴晴先輩が勝ち逃げするのかと思っていたけれど、霰先輩の美尻と美脚への執着心を侮ってはいけないらしい。




「災害から避難できたとしてもあの宝物がないと死んだも同然。それすなわち、今の僕の手元には宝物がないから僕は屍って事。」




どんな解釈ですかそれは。


独特な思考回路に困惑しているのは私だけの様で、瞳を爛々とさせている雷知先輩の表情は、この展開を待ってましたと言っていた。



やはりこの人も、昴晴に負けず劣らず悪党である。

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