第42話

例えばこの視聴覚室を何らかの大災害が襲ったとしよう。


まず間違いなく、昴晴先輩の腰椎ようつい尾骶骨びていこつは死亡すると思う。



知識のない私でもその確信を抱けるくらいには、昴晴先輩の避難の仕方はなっていない。そして大災害が実際に起ころうと私はこの人を助ける気は更々ない。


昴晴先輩の悪質な詐欺罪を考えれば、情状酌量じょうじょうしゃくりょうの余地はないだろう。最高裁判所の裁判長だってその判決を下すに決まっている。下してくれると信じている。





「避難訓練は確かに大切だね。」




どうして怪しさしかないおっぱい星人の発言に納得できるのだ。


すぐ隣から発せられた声に慌てて視線を滑らせれば、至って真剣な表情で霰先輩が頷いている。貴方は天然なのか?



事情を知っている私の目には、昴晴先輩の逃亡が奇行にしか映らない。


あっさりとおっぱい星人の言い分を鵜呑みにした霰先輩に吃驚している私に「しーたん、しーたん」とロリコンチャラ男が話しかけてきた。




「何ですか。」


「ふふっ、これから面白い展開になるから要チェケラだよん。」




あんたはラッパーか、レペゼン幼女趣味か。


相も変わらずシガレットチョコを食べている雷知先輩は、唇に見事な弧を描いた。



その笑顔は悪戯を企む子供の様だった。

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