第41話
そんな霰先輩から逃れる為か、昴晴先輩が静かに机の下に沈没ていく姿が視界の端に映る。
正直に言わせて頂こう、その逃亡は無謀だと思う。
何せ昴晴先輩は身長が高い。それなのに机の下に身を潜めようだなんて、余りに無茶だ。
「昴晴、地震なんて来てないよ。」
まだあの人が逃亡しようとしている理由を知らないのか、リュックを置いた霰先輩は不思議そうな視線を送っている。
ふわり
躊躇なく私のすぐ隣の席に霰先輩が腰を下ろす。それと同時に、横から広がった甘い花の香りが鼻腔を魅了しながら抜けていった。
「このご時世、いつ何時災害が自分の身に降りかかるか分からないでしょう霰。だから避難訓練をするに越した事はないんだよ。」
よくもまた、そんなスラスラと言い訳が出てくるものだ。
まさに頭隠して尻隠さずな状態になっている昴晴先輩の口調は、一切の動揺がない。
この男の平然と人を騙す才能は天性の物かもしれない。そうに違いない。
私だけでなく、同じ会員の霰先輩にも詐欺まがいな嘘を吐くとは恐るべし天文昴晴。その貴公子さながらな外見も質が悪いったらない。
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