第35話

人の顔色を靴底で比喩する人間なんて初めて出逢った。


だがしかし、天文昴晴という男ならば有り得るかもしれないと思い始めている。




「雷知、僕にも一本チョコレート頂戴。」


「はいどーぞ。」


「わーい、これって安っぽい味がして美味しいんだよね。」




それは誉めているつもりなのだろうか。


早速シガレットチョコを口に咥えている昴晴先輩の横で「そうそう癖になっちゃうよねぇ」と普通に応答している雷知先輩。



そういやさっき、二人の関係は幼馴染だと言っていたっけ。


一見すると、この両者は正反対だ。生きているベクトルすらも真逆の様に思われる。



しかしながら、この二人の仲は大変に良好みたいだ。


はっきりとした理由はないけれど、両者から滲み出ている空気や二人の会話を見る限り、ただの幼馴染ではないと察する事ができる。




「ねぇ昴晴。」


「ん?どうしたの雷知。」


「さっきから随分と呑気してるけど、あらりんの大切な美脚切り抜き全集見つけたの?」


「………わ、忘れてた!!!!」


「あーらら、どうすんの~?あらりん一度機嫌損ねたら夏休みくらいの期間引き摺るよ~?」




楽しそうにチョコレートを食べていた昴晴先輩の表情が、雷知先輩の言葉で漫画みたいに一変した。

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