第34話

あ、あれ。


あれれ。苦くない。というより、とても甘い。




「これ、煙草じゃないよシガレットチョコ。」


「へ?」


「あはははっ、本物の煙草だと思ってたなんてしーたんってば可愛いねぇ。」




血の気が引いていたと思えば、今度は勘違いしていた羞恥心で顔が熱くなる。


今日の私の顔面は実に忙しない。



目を丸くして瞬きを繰り返す私が酷く滑稽なのだろう、声を出して笑っている雷知先輩が再び耳元を甘い声で擽った。




「これさっきまで俺が食べてたから、しーたん俺と間接キスしちゃったねん。」




鼓膜で蕩けたその一言に、私の頬は火を噴く勢いで熱を集める。



くそう、くそう、くそう。


顔面偏差値が高いだけでなく、こんな糖分だらけの言葉を吐くなんて罪だ。何らかの刑罰に処すべきだ。



でないと、世の女性の心臓が破裂しかねない。




「しーたんのほっぺ、俺の髪の色とお揃いだね。」


「そうかな?雷知の髪より時雨ちゃんの頬は赤いと思うよ。」




どうしてそんなに冷静に評論できるの貴方。


こちらのやり取りをずっと観察していたらしい昴晴先輩は、まじまじと私の顔を見つめた。




「うん、やっぱり時雨ちゃんの頬はルブタンの靴底より真っ赤だよ。」


「他に例えはなっかたんですか。」

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