第33話

「俺がさっき廊下で新入会員さん?って訊ねた時、しーたん人違いですって言ってたよね?」


“嘘つきちゃん”




前言撤回。私はいけない子でした。


自分の顔から血の気が引いていくのが嫌でも分かった。




昴晴先輩の登場で言葉を遮られたから、雷知先輩も聞きそびれているだろうと決め込んでいたけれど、どうやらちゃんと私が反射的に嘘をかました事を聞いていたらしい。


なんて地獄耳だ。





「すみませんでした。あれはとてもすみませんでした。」


「あははっ、しーたんってば日本語可笑しくなってるよん?」




貴方の日本語も初登場時から大分可笑しいと思います。



嘘が露呈した私の顔面は、恐らく挙動不審の限りを見せていた担任よりも蒼白い事であろう。




色気を含んだニヒルな笑みを浮かべている雷知先輩のちゃらんぽらんな外見から、てっきり適当な人なのだろうと勝手に思い込んでいたが、どうやらその予想は大きく外れていたようだ。



昴晴先輩の外見にも騙されたというのに、全く学ばない脳である。




「それにね、しーたん。」


「何でしょうか雷知せんぱ……ふごっ…。」




決して侮ってはいけない人物だという事が確定した相手に、元気の良い返事をしていた途中で私の口に突っ込まれたは、先輩が手にしていた煙草だった。

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