第29話

前髪をくしゃりと掻き揚げて、それをささっとピンで留めた雷知先輩の美しいお顔が、ここぞとばかりに露わになっている。


桜色の髪が似合う時点で相手の顔立ちが端麗な事は確かだけれど、それだけでは飽き足らずどんな髪型も似合ってしまう様だ。



現に今、目の前で前髪を上げてニキビ一つない額を見せているけれど、偉く絵になっている。


こんなにも美しい人が幼女趣味だなんて信じられない。信じたくない。知りたくなかった。




「てかてか、あらりんとつーちゃん遅くなーい?」




箱から新しい筒状のそれを取って口に咥えた相手が、首を傾げながら昴晴先輩へ視線を送る。



先程から当然のように煙草を登場させていらっしゃるけれど、雷知先輩って二年生なのではなかったか?


どう考えても校則違反を飛び越して、社会的法律違反なのではないか?




「ああ、あの二人ならそろそろ来るんじゃないかな。クラスで話し合いがあるから遅れると思うって偶然会った次曇つくもから聞いたからね。」


「ふーーーん、そっかぁ。つーちゃん今日はどの女の子と同伴して来るかなぁ?」


「この頃はカナちゃんがお気に入りらしいよ。」


「え~ミユちゃんの方が可愛げあったのにぃ。」




仮にも新入会員であるはずの私そっちのけで、次元の違う会話を繰り広げる両者。



私は見事に置いてけぼりを食らっている。

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