第17話
そもそもこの綺麗な男は、どうしてこんな人の寄り付かない最果ての五階にいるのだろうか。
あ、私も人に言えた事ではなかったか。
「そういえば可愛い子ちゃん。」
その呼び名どうにかならないだろうか。それはもしかしなくても私の事だろうか。十中八九私の事に違いない、何せ周りに人がいないのだから。
欠伸を零して瞳を涙で潤ませた相手が、ポケットを
パッケージは見えないけれど、箱の中には細長い筒状の物が揃っているのが確認できる。
私へ視線を向ける傍ら、器用に手探りで一本だけ指で摘まんだ男はそれを口に咥えてにっこりと微笑んだ。
「こんな治安の悪い所にいるって事は、もしかして可愛い子ちゃんが昴晴の言ってた新入会員さん?」
コテン。首を横に折った相手の口から飛び出したのは、無念極まりない事に私の知っている名前だった。
「いや、人違いだと思い…「あ!やっぱり時雨ちゃんだったんだね。」」
最低最悪のタイミングでようこそ。
思い切り嘘を吐いて否定しようとした自らの声は、視聴覚室から登場したエセ紳士によって遮断された。
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